脳梗塞の分類と前触れ症状(TIA)

日本人の死因第4位となっている脳卒中は、脳の血管が破れて出血を起こす「脳出血」「クモ膜下出血」と、脳動脈に血栓が詰まって脳の組織が壊死する「脳梗塞」に分けることができます。

リハビリによる後遺症の回復が大切

従来、脳卒中は高血圧を原因とする脳出血とクモ膜下出血が大部分を占めていましたが、降圧薬の普及・進歩によりによって最大の危険因子である血圧コントロールが可能となった現在では、脳血管の動脈硬化による脳梗塞が増加しています。

脳梗塞の症状としては、ろれつが回らない、言葉が出てこない、体の左右片側だけが動かない、しびれる、力が入らないなどです。脳の右側の血管が詰まれば体の左側、脳の左側の血管が詰まれば体の右側に症状が現れます。重症の場合は意識が低下して、昏睡状態に陥ることもあります。

脳梗塞はその原因によって「アテローム血栓性脳梗塞」「ラクナ梗塞」「心原性脳塞栓症」の3つのタイプに分類することができます。

アテローム血栓性脳梗塞は、脳の太い血管に血栓(血の塊)が詰まってしまい、栄養と酸素の供給が途絶えてしまった脳の細胞が壊死してしまうものです。”アテローム”とは、血液中の不要なコレステロールが血管の内壁にたまってできたおかゆ状のコブのことで、このアテロームが溜まると血管が徐々に狭くなってしまいます。

何らかの原因でこのアテロームが破れてしまうと、修復のため血小板という血を固める成分が集まって血栓を形成します。これが血管を詰まらせることで脳梗塞を発症するのです。

ラクナ梗塞は、脳の細い血管に高い血圧がかかり続けることで、血管壁が厚くなって硬くなり(動脈硬化)、血管の内腔が狭くなって最終的に血管が詰まってしまうものです。症状は比較的軽く、あるいはまったく症状を自覚しない場合もあります。いわゆる「隠れ脳梗塞」(無症候性脳梗塞)と呼ばれるタイプです。しかし、ラクナ梗塞は再発しやすく、気づかないまま複数の部位に梗塞が起こり認知機能に障害が出る恐れがあります。

心原性脳塞栓症の原因の約70%は、心房細動という不整脈です。心房細動が起きると心臓内で血液がよどんで血栓ができ、それが血流によって脳に運ばれて血管を詰まらせてしまうのです。心臓で作られる血栓は他の部位でできる血栓よりもサイズが大きいため、脳の太い血管も詰まらせてしまいます。太い血管は細い血管に比べて重要な働きをしているので、発症時に脳の広範囲にわたって大きなダメージを及ぼしてしまいます。

脳梗塞の危険サインであるTIA(一過性脳虚血発作)を見逃さない!

一時的な手足のしびれや麻痺、言語障害、めまいなどの脳梗塞の症状が現れ、10分以内から遅くとも24時間以内に治まってその後はなんでもないことがあります。これは「一過性脳虚血発作(TIA)」と呼ばれる、脳梗塞の前触れ症状で、脳梗塞を発症した人の約30%が経験していると言われています。

脳梗塞の前触れ症状

一時的に脳の血流が途絶えることで、脳梗塞の症状が現れるのですが、短時間のうちに血栓が溶けて血流が再開するため、脳の細胞が壊死する前に正常な状態に戻るのがTIAの大きな特徴です。TIAを発症すると48時間以内に今度は本格的な脳梗塞が起こるリスクが高まり、約30%の人は3か月以内に本格的な脳梗塞を発症しています。

したがって、TIAの症状が短時間で治まったからといって、「治ったから大丈夫」「最近忙しかったし、疲れのせいに違いない」「この年齢で脳の病気になるはずがない」などと自己判断で放置するのは危険です。一般外来ではなく、救急外来を速やかに受診しましょう。

脳梗塞の前触れ症状であるTIA(一過性脳虚血発作)で医療機関を受診すると、脳梗塞の有無を診断するため、MRI(脳の断面を撮影する)、MRA(脳の血管を立体的に描き出す)、CTなどの各種画像検査を実施します。また頸動脈に狭窄が起きていないかを調べるために頸動脈エコーを行ったり、脳梗塞の原因となる心房細動(不整脈の仲間)を調べるために心電図検査も行われます。

同時に、「ABCDスクエアスコア」と呼ばれる指標によって、TIA発症後に本格的な脳梗塞が起きるリスクがどの程度なのかを把握します。これらによって危険と判断された場合には、基本的に入院での治療が必要となります。また1週間以内にTIAを繰り返す、画像診断で梗塞が見つかった、心房細動が確認された場合なども入院が必要となります。

脳梗塞は発症して4時間半以内ならば、血栓を溶かす薬の点滴で治療(t-PA静注療法)ができ、劇的に症状を回復させたり、後遺症を最小限に抑えることが期待できます。