SCU(Stroke Care Unitの略:脳卒中集中治療室)は、脳卒中の専門医師(脳神経外科医、神経内科医)、看護師、リハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)などの複数の医療専門職で構成される脳卒中専門チームが、脳卒中の患者さんに対して急性期から回復期リハビリテーションまでの治療を集中的に行う病棟のことです。
簡単に言うと、脳卒中を起こして間もない(急性期)、病態が不安定な脳卒中の患者さんに対して高度な集中治療を行う病棟であり、脳卒中専門のICU(集中治療室)を意味します。SCUは90年代後半にデンマークを中心とした北欧で普及し始め、脳卒中の患者さんの予後の改善、早期の機能回復、入院日数の短縮化などの効果が認められ、日本でもSCUを新設する医療機関が増えてきています。
救急搬送されてきた患者さんに対しては、直ちに診察を行った後、CTやMRIで脳の断層撮影を行い、脳卒中の初期治療を開始します。脳梗塞の患者さんが血栓溶解療法(t-PA治療)を受けた場合、症状が不安定で危険な状態の場合、脳の障害が強い場合などは、脳卒中専門の集中治療室であるSCUでの診療が重要となります。
SCUで行う治療で近年注目されているのが、急性期の脳梗塞の患者さんに対して行う血栓溶解療法(t-PA治療)です。脳梗塞の治療の理想は、詰まった血管の血流を再開通させて脳細胞が壊死することを防ぐことです。そこで開発されたのが血栓を溶かす強力な作用があるrt-PAという薬剤です。
発症から4.5時間以内に注射と点滴の投与で治療を受ければ、治療を受けない人に比べて後遺症もほとんどなく退院できる患者さんの割合が高いことが証明されています。日本では2005年10月からこのt-PA治療が保険適応となっています。
具体的な数字としては、脳こうそくの患者さん100人に対してこのt-PA治療を行うと、約40人は後遺症もほとんどない状態に回復します。また3か月後に介助なしに身の回りのことを自分でできるようになった患者さんの割合は33.3%という全国調査の結果もあります。
ただし投与開始後の24時間は出血(出血性脳梗塞)のリスク型高く、厳重な経過観察が必要となるので、SCUなど高度な専門治療が行えるスタッフがいないとこの治療を行うことはできません。またt-PA治療の適用には様々な条件があるため、実際に脳梗塞で病院に搬送された患者さんでこの治療が選択されたのは、わずか5%となっています。
t-PA治療は脳梗塞を発症してから4.5時間以内に行う必要がありますが、発症した時間が分かっていても、治療が適用されるにはほかの条件をクリアしているかを調べる時間も必要です。そのため、脳梗塞発症から遅くとも3.5時間以内には医療機関に到着していなければなりません。
したがって、手足の麻痺、言語障害、眩暈、視野狭窄などの脳卒中の症状が現れたら躊躇しないで119番で救急車を呼んで、救命救急士に症状を説明し、SCUのある専門施設などに搬送してもらうことが大切です。